03.decide

「呼んだ??」
声のした方向を向くと、変なウサギのかぶり物をした人物が立っていた。

「さっき偶然ここを通ったらものすごい音がしたからびっくりして来ちゃったよ」
ウサギのかぶり物をした人物はそう言いながら部屋へ入ってくる。声の響きだけでは女なのか男なのかわからない。
「嘘ですよ。さっきから入り口でスタンバってましたよね。…狗塚郁、この人がラヴィさん」
「はじめまして。【ノアの箱舟】のラヴィ・アンダーグレイです。ワンコくんだっけ?よろしくね」
「いや、俺はワンコじゃなくて狗塚です…」
前にもこんなやりとりしたな…佐伯さん俺の名前分ってるのに毎回俺のことワンコって…それで猿間さんが…
「あー、ラヴィさん郁くんのこと泣かした~!!」
リリィの声にはっとして頬を触ると濡れていた。
「すいません、違うんです。前の上司にワンコって呼ばれてて、懐かしくて…」
「そうなんだ、じゃあ、これからワンコくんって呼んでいいかな?」
「はい、構いませんよ」
「さて、ワンコくんずっとこの姿のままだと、もしも突然デッド達が襲来してきたら戦えないよ。丸腰だ」
「ラヴィさん、そういうことは冗談でもおもしろくないです」
夕凪が不機嫌そうに答える。
「やだな、ジョークだよジョーク。そうだリリィから聞いたけどワンコくんは銃の扱いがうまいらしいね」
「はい、あまり使う回数はありませんでしたが、上司には銃の扱いだけは特にうまいとは言われてました」
「ワンコくんにぴったりの血統武器を僕からプレゼントしよう」
ラヴィは手のひらを上に向けると次の瞬間手の平の中心に紅い塊が集まっていき、あっという間に拳銃の形に変わる。
「血統武器は対化物戦闘武器だよ。ワンコくんは半吸血鬼だから自分じゃ血統武器は創り出せないからね。はい、大事に使ってね」
ラヴィに差し出され、拳銃はズシリと重く、狗塚は確かめるように強く握った。
「装弾数は6発。デットを一発で細胞諸共破壊することができる。元警察官で銃の使用経験もあれば、すぐにでも戦闘に参加できるよ。それじゃ、私は上層部に呼ばれてるからここで失礼するね」
ラヴィは狗塚達に手をふり、部屋から出て行った。
「・・・狗塚郁。あんた、泣き虫ね」
夕凪はポツリとつぶやく。
「悪かったな。あとそろそろフルネームで呼ぶのやめてくれませんかね?イヌヅカ カオルがイヌヅカオルに聞こえるんだけど・・・・」
「カが多いんだよ!苗字と名前の間にカを連続で入れんな!」
「いやいや、苗字と名前の間に間をおけばいいじゃん!狗塚 郁って。間を!」
「…じゃあ、イヌ」
「いや、せめて苗字か名前にしてぇ!」
「もー!二人してちょかいかけ合わないの!」
「「だって、こいつが生意気なんだよ!こっちは年上なのに!」」
互いが相手を指差す。
「・・・つかぬことをお聞きしますが、夕凪ちゃん、さんのご年齢は…?」
「・・・棺桶から目覚めた時からこの姿だったから実際の年齢は分らないけど、イヌ(あんた)よりは年上よ」
「…ってことは、以外に年配、」

今日2度目の背負い投げをくらい、郁は自分の背中をさする。
「大体、私(吸血鬼)に年齢なんて関係ないでしょう」
「まぁ、そう、なのかな…?」  
何百年何千年生きてようが、姿形は変わらないってことか…じゃあ、おれは?半分吸血鬼だったら、歳はとるのか?でも若返ってるしな…
「…郁、あんたはまだ半分しか吸血鬼化してないから老いていくと思うけど…」
「へー…そうなんだ。って、俺声に出してた!?心の声」 
「郁くん顔に出てたよー」 
こんなに顔に出やすいとは…身を引き締めよう。特に顔筋を。 
「郁」
「…なんでしょうか、夕凪ちゃん」  
「…わかってるとは思うけど、アンタ殺れるの?」
あのとき襲ってきた彼女は人型をしていた。一見自分と同じ人間にしか見えない。デッドだとしても俺は人を撃てるのか。
「わからない。でももう後悔を繰り返したくない、とは思ってる」
「…アンタのせいで殺り逃がしたくないから、足手まといにはならないでね」
夕凪はそう言うと郁の方へ鍵を放り投げた。
「アンタの部屋の鍵よ。場所はリリィにでも案内してもらって」
「任せて~!夕凪ちゃん!さぁさぁ、郁くん行こ行こ」
「服も部屋にあるから、着替えたら出発するわよ」
「どこに?」
「昨日回収したデッドの脳にICチップが埋め込まれてた。解読したらある場所が特定された。罠かどうかは行ってみないとわからないし、罠だったとしても殺ればいいからね」
「それで、特定された場所って?」
「今は使われてない製造工場だった。郁、あんた達(警察)が研究員の死体を見つけた場所の近くよ」

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